女性の病気


・ 卵巣のう腫

卵巣のう腫は、卵巣の中に分泌液が溜まって腫れてしまうものです。ブヨブヨした水風船みたいなものになってしまい、たまる液体の種類によって皮様のう腫、偽ムチンのう腫、しょう液性のう腫の3種類に分けられます。

●皮様のう腫
菌や毛髪、歯、骨などが混じってドロドロの脂状のものが詰まったもので、成熟期の女性に見られ、妊娠中に見つかることも多い。
●偽ムチンのう腫
粘り気のある液体が詰まったもので、更年期の女性にできることが多い。
●しょう液性のう腫
水みたいなさらさらした液が袋の中にたまる状態で、10代から30代の若い女性に最も多く見られる。
●充実性腫瘍
カチカチの硬いコブのようになり、ほとんどが悪性。

卵巣はお腹の奥の方にあるので、「沈黙の臓器」とも呼ばれています。なぜなら、腫瘍が小さいうちはほとんど症状が現れないため、発見が遅れてしまうことが多いからです。
大きくなったのう腫は、わき腹を触った時、しこりを感じることもあります。
腰痛、下腹部痛、生理不順、腹水が大まかの症状ですが、これらは子宮筋腫などの別の病気にも現れるので間違いやすいかもしれません。

また、卵巣が根元からねじれてしまう「茎捻転(けいねんてん)」を起こすと下腹部に激しい痛みが起こります。腫瘍が悪性と疑われるもの、茎捻転を起こしたとき、のう腫が握りこぶしより大きくなったときは手術が必要となります。
良性の場合は腫瘍のみの摘出ですが、かなり大きくなっている場合は、卵巣ごと摘出しなければならなくなります。しかし、卵巣は2個あるので、残った方が正常に機能していれば妊娠は可能となります。

子宮内膜症

子宮内膜症とは、子宮内膜の組織が、卵巣内や子宮周囲、子宮の壁、子宮と腰を支える靭帯、膀胱や直腸の近くなど、子宮の内側以外の場所にできる病気のことです。
発生したそれぞれの場所で月経と同じ現象が起き出血を繰り返します。そして出口がないために体外へ排出されず体内に血液がたまり周囲と癒着を起こしたり、増殖するにつれ硬いコブを作ったり、特殊な場合だと肺などで発生することもあります。

また、腺筋症(内性子宮内膜症)とは、子宮内膜組織が子宮筋層内部に発生します。子宮筋腫の症状と似ており、子宮筋腫を合併していることが多いです。子宮内膜症の症状として、以下のものがあげられます。

  • 生理痛・下腹部痛がひどい
  • 下腹部以外の痛み
  • 性交痛がある
  • 不正出血

子宮内膜症の治療法

・偽妊娠療法
ピルで排卵を止める。
・偽閉経治療法
ボンゾールという男性ホルモン剤を使って閉経と同じ状態にしたり、スプレキア、リュ−プリン、ゾラデックスなどの薬で下垂体レベルで女性ホルモンの分泌を抑制する。

症状がひどいときは手術で病巣部を切除することになりますが、将来妊娠の希望がなければ子宮と卵巣、卵管などを全摘出します。
子宮内膜症は月経がある間は完全に治癒した状態になることはなく、家庭生活や夫婦生活にも大きな影響を与える可能性もあり、この病気との付き合いは長くなるので、家族には症状を説明し、理解を得る必要があります。



子宮筋腫

成熟期の女性の4、5人にひとりが持つと言われています。

子宮筋腫とは、どんな病気?
     
子宮は妊娠や陣痛の時に伸縮する子宮筋層からなり、筋肉の両面を膜が覆う三層構造になってい ます。内側を覆う膜を子宮内膜、外側の膜を漿膜といいます。子宮筋腫筋腫とは、この子宮筋層にできる良性の腫瘍です。
  
子宮筋腫の発生には、卵巣の働きが関係しており子宮筋腫の芽ともいうべき筋腫核が、卵巣から分泌される女性ホルモンの作用によって増殖し、筋腫になると考えられています。
 
腫瘍の大きさや数は様々で、性成熟期(子どもが生める体)の女性の大半が子宮筋腫をもっている と言ってもいいほどポピュラーな病気です。
    
   子宮筋腫の発生する場所
    
子宮筋腫は、発生する場所によって大きく3つに分けられ、それぞれ症状も異なります。最も多い場所は筋層内筋腫、次に漿膜下筋腫、そして最後に粘膜下筋腫があります。子宮頸部にできるケースもありますが、95%が下記の3箇所で起こります。
  
     
 筋層内筋腫 
 
  
<子宮の筋肉の中で筋腫が大きくなる>
筋腫が大きくなるにつれ、子宮の内側を覆う子宮内膜が引き伸ばされるため月経痛や月経時の出血が多くなり、下腹部を触るとしこりを感じるようになる
 
 
 漿膜下筋腫
  
  
<子宮の外側に向かって大きくなる>
かなり大きくなっても症状が出にくいため、外から触れて分かるほど大きくな っても、太ったと勘違いしがちである
   
  
 粘膜下筋腫 
 
<子宮内膜に向かって大きくなる>
発生率は少ないが、症状は最もはっきりと現れる。筋腫が小さなうちから月経多過や不正出血の症状がみられる
 

 
 
子宮筋腫にはどんな症状があるの?
      
筋腫が小さいうちは、自覚症状が見れらない場合が多いようです。日常の生活に支障をきたすこともなく、生涯無症状の人もいるくらいです。それは成長するスピードや部位にもよるのですが、一般的には、月経多過や不正出血、貧血、動悸、息切れなどが現れます。また、ひどい月経痛や下腹部の痛み、頻尿や便秘などにも悩まされるようになります。以下に症状をまとめてみましたので、ご参考になさってください。内膜症と同じで、不妊症の原因にもなりかねませんので、お早めの診断を心がけてください。
 
     月経のときの出血量が、1枚のナプキンでは足りないほど多い。
     月経のときに、レバーのような固まりが出る。
      月経のときに、下腹部の痛みや張り、腰痛、下痢、便秘などが起こる。
     月経以外の時期に、少量の不正出血がある。
     うすい黄色の水っぽいおりものがある。
     若いのに、頻尿や失禁症がある。
     脚がよく痛む。
 
 
子宮筋腫の診察方法は?
 
    触診(双合診)      
医師が薄い手術用の手袋をつけ、片方の指を膣内に、もう片方の指をお腹において、両方の手指ではさんで診察します。子宮や卵巣、膣などについて、腫れや硬さ、弾力などを調べます。
 
    超音波検査(エコー)      
妊婦が胎児の大きさをみるときに使っているものと同じです。超音波をあて、おなかの中の画像を取る方法と、腟の中に器具を入れて、体の中から直接写す(腟エコー)方法があります。腟エコーのほうが綺麗な画像が取れるため、優れていると言えます。(内膜症と同じ方法)
  
    CT(コンピュータ断層撮影)検査      
コンピュータとX線走査装置を用いて体の精密な断層画像を見ることができます。
 
    MRI(磁気共鳴画像装置)検査      
放射線を使わずに、あらゆる角度から体の中の画像を見ることができます。(内膜症と同じ)CTスキャンよりも、かなり精密な画像が得られます。
  
 
子宮筋腫の治療方法は?
 
    薬物療法    
症状が軽く日常生活に支障がない場合、症状を緩和させながら経過観察を行います。この療法には以下の2種類があります。
  
      
 ホルモン療法
  
<飲み薬や注射などで女性ホルモンの分泌を抑える>
子宮内膜症の治療に用いられる合成ホルモン剤のプセレリンやタナゾール」を処方。エストロゲン(女性のホルモン)の分泌を抑えて、人工的に閉経状態にして、筋腫を小さくしていく。
  
 
 対症療法
 
  
<症状を和らげる>
 ・ 止血剤 ・・・ 月経過多、不正出血
 ・ 鎮痛剤 ・・・ 月経痛
 ・ 増血剤/鉄剤 ・・・ 貧血
薬の使用をやめると再発するが、筋腫が小さく症状の軽い人や妊娠中の人、更年期の女性などに適している。
 
      
 閉経以降は筋腫の発育が抑えられ、加齢とともに萎縮していくため、再発の可能性は小さく自然に治癒していく場合もあります。どちらにしても、定期的に通院して症状に応じたお薬を処方してもらいましょう。
      
 
    手術療法  
月経多過、出血による貧血、ひどい月経痛、不妊、早流産などの弊害が考えられる場合は女性としての生活の向上のためにも、この療法による治療を積極的に考えてみて下さい。
     
     
 筋腫核手術
 
  
<筋腫のみを摘出する>
対象者: 妊娠を希望する女性
問題点: 目に見えない小さな筋腫核は取れないため、再発の可能性が高く、再び手術をしなければいけないケースがある。(治療法としては不完全)
  
  
 子宮全摘出手術
 
<子宮をすべて取り去る>
対象者: 妊娠、出産を終えた女性
問題点: 特になし(再発することがない、完全な根治療法)
種 類 : 腹式全摘手術・・・ 開腹して筋腫を切除
腟式全摘手術・・・ 腟から子宮を引き出して摘出
 
 
 
注意事項・その他
   
子宮筋腫があると、月経過多になっていることがおおいため、貧血になりやすくなります。その予防のためにも鉄分の栄養補給を忘れずに行いましょう。動悸や息切れ、頭痛、だるさなどの症状もこの貧血が原因で起こることがあります。
 
<鉄分を多く含む食品>
レバー、赤身の魚(カツオ・マグロ)、貝類、海藻類、肉類、小魚、緑黄色野菜(ニンジン)など





子宮頸管ポリープ

子宮頸管ポリープは、30〜40代の女性に多く、子宮頸管の内膜や子宮体部の内膜の一部が増殖して真っ赤なポリープ状になって垂れさがった状態になったものです。
ポリープができるのは、ほとんどの場合一つだけで、大きさは、たいていのものが2〜3mmですが、ときには1cm程度になるものもあります。

症状としては、膣からの出血、性交時の出血、おりものの増加、不正出血があげられます。子宮頸管ポリープそのものは良性ですが、ときに頚ガンがポリープ状になっていることもあります。念のため、摘出したポリープは組織検査をしてもらいましょう。



子宮頚管炎

子宮頚管炎は、子宮頸管内に細菌が入り炎症を起こすものです。原因は、ブドウ球菌、大腸菌、淋菌、クラミジア、連鎖球菌などが考えられます。

子宮頸管炎は、慢性になると不妊の原因になってしまうので、早めの治療が必要となります。治療としては、感染の原因菌を確定し、その菌に有効な抗生物質を膣座薬として入れて治療を行います。子宮をいじめるような刺激や、性感染者との性交渉や不潔な場所での性行為などは避けるようにしましょう。



卵管炎・卵管炎

◎卵管炎とは、卵管に炎症が起こる病気です。細菌が関係したものと、卵の物質が体内に残り発症する二通りのケースがあります。
卵管は身体の奥の方にあり、治療も厳しく、症状がひどい場合が多いので、注意が必要になります。
ほとんどが不摂生(人工妊娠中絶、流産、出産、不潔な性行為、タンポンなどの出し忘れなど)で細菌感染したことが原因と考えられます。
急性卵管炎は淋菌など強い毒性が原因となり、ときには40度にまで及ぶ高熱が出たり吐き気をともなうことがあり、左右どちらかの腹痛から全体への腹痛へと移行していくのが特徴となります。
膣からの出血や黄色い膿のようなおりものが出て、慢性化すると月経痛、腹痛、腰痛、排便、排尿痛などが残ってしまいます。

◎卵巣炎とは、卵巣に起こった炎症のことです。卵巣だけが単独で炎症を起こすことはほとんどなく、多くは卵管も炎症を起こします。
炎症がひどく、癒着(ゆちゃく)が進んでいる場合などは、卵子や精子が通りにくくなり不妊症の原因となってしまうため、手術を行う場合もあります。慢性化を防ぐため、完治するまで性行為を控えましょう。





非特異性膣炎

非特異性膣炎とは、大腸菌やブドウ球菌など、一般的な細菌が原因でおこる膣炎のことです。牛乳をこぼしたようなおりもの、いやなにおいが特徴の病気で、排尿時に痛みを感じることもあり、炎症がひどくなると出血することもあります。
膣内を洗浄し、膣錠の抗生物質を投与すれば1〜2週間程度で治癒することがほとんどですが、膣内がむれないように通気性のいい下着をつけ、毎日の入浴などで清潔を心がけるようにして予防をしましょう。


外陰トラブル

外陰トラブルとは、大陰唇、小陰唇、クリトリスなど外性器部分にできたしこりや潰瘍を総称したものです。
原因やしこりの症状などはさまざまですが代表的なものには次のようなものがあります。

◎性器ヘルペス

ヘルペスウイルスにより感染し、外陰部に多数の水ぶくれができ、痛みや発熱などを伴います。
水ぶくれはつぶれて潰瘍となり、排尿時にはげしく痛んだり、痛みのために歩行に支障がでることもありますが、感染しても症状があらわれないこともあります。
このウイルスにいったん感染するとずっと体内に潜伏し、性交とは関係なく再発します。妊娠中に感染・再発、発生すると、流産や早産を誘発するほか、新生児が全身性ヘルペスにかかって死亡する危険性があります。

◎ベーチェット病

厚生省の特定疾患治療研究事業対象疾患に指定されている難病の1つであり、原因不明の炎症で、口、目、皮膚にでき、女性の場合は外陰部に潰瘍ができることもあり、うずくような強い痛みがあります。
失明や死亡にいたることもある怖い病気ですが原因が解明されていないため、決定的な治療法も発見されていません。対処治療法として、副腎皮質ホルモン剤や抗生物質の軟膏を用います。

◎バルトリン腺炎

膣の入り口左右にある分泌腺・バルトリン腺に大腸菌、ブドウ球菌、淋菌などの雑菌が侵入し炎症を起こした状態で、小陰唇の外側や大陰唇が赤く腫れ、強い痛みをともない、ひどいときは発熱することもあります。

◎外陰脂肪腫/外陰線維腫

外陰部の脂肪組織、または線維組織が増殖してできるしこりのことです。
脂肪腫は丸くやわらかいしこりで、線維腫はコリコリと弾力のあるしこりとなります。どちらも痛みやかゆみがないので、小さなうちは気づかないことが多いですが、大きくなると性交時や歩行時に異物感を感じることもあります。
ほとんどが良性なので、定期的な観察以外、特に治療を必要としませんが、大きくなれば摘出手術をします。



外陰炎

外陰炎とは、大陰唇とその周辺に起こる炎症のことです。外陰炎には大きく分けて「感染性外陰炎」と「非感染性外陰炎」がります。
◎感染性外陰炎
乱暴な性交渉や、マスターベーションにより外陰部に傷ができ、そこに細菌が感染して炎症を起こしたもの。原因菌は、ブドウ球菌、淋菌、連鎖菌、大腸菌。
◎非感染性外陰炎
アレルギー、下着との摩擦、石鹸や薬品によりかぶれてしまうもの。軟膏などで治療をしますが、市販の軟膏を勝手に塗ると、場合により悪化し外陰部が黒ずむ原因となるので自己判断はやめましょう。

外陰炎の予防には、清潔を保ち、通気性のいい下着をつけることです。また、排泄の際は、前から後ろに拭くようにしましょう。





甲状腺腫

◎甲状腺腫とは、甲状腺が腫れて大きくなっていることです。甲状腺の腫れは首が太くなってきて気づきます。
しこりの数は1個の場合もあれば、複数の場合もあります。主な疾患症状は以下の2つがあります。
なお、両者とも薬を飲むのをやめると再発しやすくなったり、逆に長期の投与が必要になるため、医師との相談が必要です。

バセドー氏病(甲状腺機能亢進症)

血液中の甲状腺ホルモンが高くなる病気で、体重が激減します。症状としては、甲状腺の腫れ、動悸、息切れ、月経不順などです。
また、イライラしたりと精神的にも影響を及ぼしたり、人によっては眼球が突き出たり、目がギラギラしたりという症状が現れる場合もあります。
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されていると妊娠がしにくく、妊娠しても流産する可能性が高いので早めの治療が必要となります。

橋本病(甲状腺機能低下症)

甲状腺に慢性の炎症が起きている病気です。
甲状腺が単に腫れているだけで、痛みを感じなければ特別な治療は必要ありませんが、太ったり、体がむくむ、皮膚がガサガサになる、心不全が起こる…というような症状が出たら甲状腺ホルモン剤を投与する治療が必要となります。



骨粗しょう症
骨粗しょう症とは、カルシウム不足から骨の密度が減少し、骨がスカスカになり骨折しやすくなる病気の事です。
骨折しやすい部位は手首、腕やももの付け根、背骨などで、老齢での骨折は寝たきりの原因になる可能性があります。骨粗しょう症の原因としては以下のものが挙げられます。
  • カルシウム摂取不足
  • ビタミンD不足
  • ホルモンバランスの異常
  • 運動不足
  • 遺伝
また、最近では、若い女性の無理なダイエットが、骨粗しょう症につながるという報告もあります。
骨粗しょう症の治療は、カルシウム剤やビタミン剤の服用で、骨折や関節痛に対しては整形外科的な処置を行います。しかし治療の効果は長い時間をかけた後に現れ、根気も必要となるので、若いうちからの予防を心がけましょう。


乳腺症

乳腺症とは、乳房にしこりができて、生理のまえに、痛みを伴うことが多い病気です。乳腺症は、良性の病気ですから、原則的に、心配ない病気です。しこりをガンだと思い、検査する人も少なくありませんが、乳腺症によるしこりのほとんどが良性です。
ただ、乳腺症とガンは合併したり、ガンと紛らわしいものが多いので、注意が必要となります。

しこり以外に痛みがひどくなければ、とくに治療を必要とされません。痛みがひどい場合は、ホルモン剤や漢方薬などの薬物治療となります。









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